レアアースは、半導体チップ、電気自動車、軍事装備などのハイテク産業で広く使われており、多くの国がレアアースを重要視している。
9月19日の記事で報道したように、9月11日、マレーシアのアンワール・イブラヒム首相がレアアース原材料の輸出禁止方針を設けようとしている。これは、これらの戦略的資源が無制限に採掘・輸出されてしまうのを防ぐためだ。
サプライチェーン研究の情報機関Project Blueのアナリスト、David Merrimanによると、詳細が不明なため、マレーシアの禁止令の影響は不確かだが、マレーシアでビジネスを行う他国の企業に影響を与える可能性がある。
今年2月、マレーシアの規制当局はオーストラリアのLynas Groupのマレーシア支店の営業許可更新を許可したが、7月1日以降の鉱石の輸入及び処理を禁じる条件は撤回しなかった。Lynasはこれらの条件の撤回を求めて抗議した。なぜなら、これらの条件は「Lynasがマレーシアに投資する際の初期条件と大きく異なる」からだと述べた。
しかし、このオーストラリアのレアアース大手企業は、近年、マレーシアの国民と政府の共同の反対に直面しており、不利な状況に置かれている。マレーシア側は、Lynasがマレーシアで最良の環境保護措置を実施しておらず、ガス放出、廃水放出、臨時廃棄物処理において国際基準に従っていないと指摘している。さらに、Lynasには具体的な廃棄物処理システムがなく、特に放射性廃棄物処理においてはほとんど進展がないと述べた。
輸出制限は確かに、この重要な原材料の供給と価格に影響を与える。しかし、現在のデータによれば、世界の希土類埋蔵量は1.3億トン(USGS米国地質調査所2022年の調査結果)で、その中で中国が最も多く、約34%の4,400万トンを占めている。マレーシアの希土類埋蔵量は世界の一部に過ぎず、約3万トンと推定されている。したがって、マレーシアの輸出規制は世界のレアアース供給市場への影響は限定的と見られる。
また、ベトナムは一つの大きな希土類埋蔵国として注目されている。米国地質調査局(USGS)のデータによると、ベトナムは、推定2200万トンの埋蔵量を持ち、中国に次ぐ世界で第二位の希土類埋蔵量を有する。USGSによれば、ベトナムのレアアース鉱山生産量は、2021年の約400トンから2022年の4300トンに増加。 9月10日、アメリカ大統領ジョー・バイデンはベトナムを訪れ、同国との技術協力を強化し、ベトナムのレアアース資源の開発や経済発展を支援すると発表した。
今年の7月には、ベトナムの副首相チン・ホン・ハが、政府の計画に署名した。この計画では、北部の諸県に位置する9つのレアアース鉱山の開発を計画し、ベトナムのレアアース生産量を増やすためだとしている。 また、同計画では、同国が2030年以降、3つか4つの新しい鉱山を開発し、2050年までにレアアース原材料の生産量を211万トンまで増加させる目標が掲げられている。 さらに、精錬された希土類の輸出を検討し、最新の環境保護技術を持つ鉱山企業だけが鉱石採掘と加工の許可を得られると明言されているが、詳細は明らかにされていない。
鉱石採掘のほか、精錬設備への投資も実施し、2030年までに年間2万~6万トンの希土類酸化物(REO)、2050年までに4万~8万トンの希土類酸化物(REO)に増加させる計画。 これは、ベトナムが世界のレアアース市場で重要な役割を果たしたいと願っていることを意味する。
日本も含め、アメリカ、ヨーロッパ、韓国などの国と地域が、世界中で中国の代替市場を探しており、ベトナムがこの機会を見て、各国との協力を強化している。
しかし、2022年のベトナムの生産データから見ると、まだ世界のトップには入っていない。USGSの発表によれば、2022年の世界レアアース酸化物(REO)生産量は30万トンである。その中で、中国の生産量は21.0万トンで、世界の総生産量の70%を占めている。アメリカは4.3万トン(全体の14%)、オーストラリアは1.8万トン(全体の6%)、ミャンマーは1.2万トン(全体の4%)であり、これらの国のレアアース酸化物の生産量は世界の約94%を占めているが、ベトナムは生産量のデータ公表がなかった。
ベトナムは世界第2位のレアアース埋蔵量を有しており、数十年後の開発状況は期待できるが、レアアース採掘や精錬の技術は短期間で開発できるものではない、環境問題も生じるため、数年以内に世界のレアアース市場に大きな影響を与えることはないと推測できる。
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