インドネシア政府は、レアアースを国家戦略資源として本格的に位置づけ、資源管理の強化と下流(分離・精製・加工)産業の育成を同時に進めている。2030年までに約74億2,000万ドル規模の産業体系を構築し、世界の重要鉱物サプライチェーンにおける存在感を高める方針だ。
政府の試算によれば、2030年時点の世界レアアース市場規模は約950億ドルに達する見通しで、同国はその1~5%のシェア獲得を目標に掲げている。同国政府は国内で8つの潜在的レアアース鉱区を特定した。カリマンタン島、スラウェシ島、バンカ・ブリトゥン州などに分布し、具体的な埋蔵量は未公表ながら、「国際競争力を持ち得る有望な規模」と評価している。一部鉱区では、タングステン、タンタル、アンチモンといった防衛・先端製造向けの戦略鉱物も確認されている。
インドネシア政府は、レアアース資源を完全に国家管理下に置く方針を明確にしており、民間への全面開放は行わず、国家主導で開発と高度化を進める構えだ。
この路線は、ジョコ・ウィドド前政権から続く資源高付加価値化政策の延長線上にある。現大統領のプラボウォ・スビアントは新たに鉱業庁を設置し、上流政策と下流研究を分業体制で推進している。
もっとも、最大のボトルネックは分離・製錬といった中核加工技術の確立にある。レアアース産業の競争力は埋蔵量だけで決まるものではなく、高度な分離技術と安定した品質管理体制が不可欠である。技術面では、西スラウェシ州マムジュでレアアースの分離・加工に関する2件の研究プロジェクトを開始する計画だ。探鉱準備と並行して分離・精製技術の確立を図る。
昨年6月には同国の経済統括相が米国に対しレアアース共同投資を提案した。一方で、中国とも電気自動車(EV)電池、レアアース、先端材料など戦略分野での協力を拡大している。同国は米中双方との関係を維持しつつ、自国資源の戦略的価値を最大化する構えだ。
