米豪企業、覚書締結 磁石リサイクル拠点を構築へ

米国の重要鉱物生産企業US Strategic Metals(USSM)は11月10日、オーストラリアのIonic Rare Earths Limited(IonicRE)とレアアース資源リサイクル事業に関する覚書(MOU)を締結した。調印式はワシントンD.C.のオーストラリア大使館で行われ、米豪両国の重要鉱物パートナーシップ強化を象徴するものとなった。

磁石リサイクル技術を活用し、米国初の多金属型レアアース生産拠点へ

覚書によると、両社はUSSMがミズーリ州で保有する許認可済み敷地内において、レアアース永久磁石のリサイクルを起点とした垂直統合型の生産体制構築を進める。
IonicREの英子会社であるIonic Technologiesが保有する特許技術を導入し、ネオジム鉄ボロン(NdFeB)磁石およびサマリウムコバルト(SmCo)磁石から希土類酸化物(REO)を高純度で回収する計画。

ミズーリの施設では、ネオジム(Nd)・プラセオジム(Pr)に加え、中国が輸出管理対象としているディスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)といった重希土類の生産も見込む。今後は米国内の重希土リサイクル案件についても、ミズーリ拠点での受け入れを含めて共同で検討する。

米豪の戦略鉱物協力枠組みを後押し

今回の協業は、2025年10月にトランプ大統領とアルバニージー豪首相が署名した「米豪重要鉱物供給確保枠組みに関する協定」を具体化するものだ。
同枠組みでは、米豪両国が今後6カ月間で最低10億ドルの投資を実行し、総額85億ドル規模の重要鉱物プロジェクト群を支援するとしている。

米国は現在、レアアース輸入の約70%を中国に依存している。既存規制の下では、2027年までに米国の兵器システムから中国産レアアースを完全に排除する必要がある。

両社の概要

US Strategic Metals(USSM)
米国の鉱物生産企業。ミズーリ州でコバルト、アンチモン、ニッケル、リチウム、銅、レアアースなどを生産する体制を構築中。複雑鉱処理能力と独自技術を強みに、米国製造業・防衛産業の国内調達を支えることを目指す。

Ionic Rare Earths(IonicRE)
豪州のレアアース企業。英国子会社Ionic Technologiesを通じ、廃磁石や鉱石濃縮物から希土類を抽出する特許技術を保有。ウガンダのマクウトレアアースプロジェクト(60%保有)やブラジルでの精製・リサイクル事業など、国際展開を加速している。

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