米国の重要鉱物企業Energy Fuelsは3月25日、ユタ州の製錬所において高純度のテルビウム(Tb)酸化物の生産に成功したと発表した。米国内で一次原料から重希土類酸化物を生産するのは数十年ぶりとなる。
同社は今回、米国内で採掘されたモナザイト鉱を原料に、純度99.9%のテルビウム酸化物の製造に成功した。すでにディスプロシウム(Dy)酸化物についても約30kgの生産実績があり、いずれも磁石用途に求められる品質基準を満たしている。
米国内サプライチェーン構築へ前進
テルビウムおよびディスプロシウムは、高温環境下でも性能を維持できる高性能磁石に不可欠であり、電動車(EV)、ドローン、防衛用途などで需要が拡大している。一方、これら重希土類は中国による輸出管理の対象でもあり、西側における供給確保が大きな課題となっている。
今回の成果は、採掘から酸化物までを米国内で完結させる体制の実証であり、北米における重希土類の安定供給に向けた重要な一歩と位置付けられる。
生産能力拡張と商業化計画
同社は現在、パイロット規模で週あたり約1kgのテルビウム酸化物を生産しており、今後はサマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)など他の重希土類の生産にも着手する計画である。
さらに、既存設備の拡張により、2027年にも商業規模での生産を開始する見通しで、年間生産能力はディスプロシウム約35トン、テルビウム約12トンを見込む。加えて、モナザイト年間1万トン処理を前提に、NdPr(ネオジム・プラセオジム)酸化物を850〜1,000トン規模で生産する計画である。
将来的には第2段階(Phase 2)として分離設備を増強し、NdPr酸化物6,000トン超、Dy約288トン、Tb約80トン規模への拡大も検討されている。これは年間約700万台分のEV用磁石需要に相当する規模とされる。
原料調達は友好国・パートナー国から
原料となるモナザイトは、米国内に加え、オーストラリア、マダガスカル、ブラジルなど友好国・パートナー国からの調達を計画している。特に豪州Donaldプロジェクトは最終規制承認を取得しており、同社の供給戦略における重要拠点の一つとなる。
また、同社はすでに米国内での希土類分離生産を実現しており、今回の重希土類生産はその延長線上にある。
「脱中国」供給網の中核へ
Energy Fuelsは、ウラン、希土類、バナジウムなどを手がける米国の主要な重要鉱物企業であり、米国内唯一の稼働中の従来型ウラン製錬所を保有する。同施設を活用した希土類処理は、西側における供給網再構築の重要な取り組みといえる。
今回の重希土類酸化物の生産成功は、米国における希土類サプライチェーン再構築に向けた重要なマイルストーンである。
一方で、精製・分離分野では依然として中国が優位性を維持しており、西側が競争力ある供給網を確立するには、更なる処理能力の拡大と継続的な投資が不可欠である。
