中重希土類に追い風、中国の輸出規制が価格を押し上げ【4/7~4/11週報】

中国の希土類需給と価格動向が世界の希土類市場に大きな影響を及ぼしています。世界最大の希土類市場として、市場の動向をリサーチし、週報や月報で市況を報告させていただきます。

一、希土類現物市場の概況

2025年4月7日から11日にかけての希土類価格は、重希土類が上昇傾向を示した一方、軽希土類は下落が目立つ展開となった。特にテルビウム系の価格が大きく上昇し、相場全体をけん引した。

ネオジム系
酸化ネオジムの平均価格は61.63ドル/kgで、前週比-0.95%、1週間の変動率は-0.23%と小幅に下落。
金属ネオジムは75.75ドル/kgで、前週比-0.73%、変動率+0.33%となった。

ネオジム・プラセオジム系
ネオジム・プラセオジム酸化物は59.50ドル/kgで、前週比-2.21%、1週間の変動率は-2.85%と大きく値を下げた。
混合金属は73.24ドル/kgで、前週比-1.86%、変動率-1.99%と下落基調が続く。

ジスプロシウム系
酸化ジスプロシウムは230.95ドル/kgで、前週比+0.73%、変動率+1.22%と堅調に推移。
金属ジスプロシウムは288.00ドル/kgで、前週比-0.73%、変動率+0.33%とやや強含み。
ジスプロシウム鉄は222.62ドル/kgで、前週比+0.25%、変動率+1.57%と安定した上昇を見せた。

テルビウム系
酸化テルビウムは940.75ドル/kgで、前週比+4.20%、変動率+7.76%と大幅に上昇。
金属テルビウムも1,154.09ドル/kgとなり、前週比+3.58%、変動率+7.69%と急騰した。

中国、7種の中重希土類に輸出規制

米中の貿易摩擦が激化する中、4月4日、中国政府はサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムなど7種の中重希土類に対して輸出規制を導入。世界最大の希土類生産・輸出国によるこの措置は、国際市場における供給を直接的に引き締める結果となった。この規制を受け、中国国内では需要減少への懸念が広がり、海外では価格上昇への期待が急速に高まっている。

米中摩擦と政策不安で取引慎重

米中の貿易摩擦が激化し、政策変更も相次ぐ中、希土類市場では慎重な取引が続いている。主要製品の価格は上昇と下落が交錯し、全体として方向感に乏しい展開となった。プラセオジム・ネオジム系は高値での成約が伸び悩み、価格は軟調。一方、中重希土類は一部で高値取引が見られ、価格の中心がやや上昇するなど、堅調な動きを見せている。

二、今週の主要な希土類製品の価格変動

主要9種類の希土類の価格及びその推移は下記の通りである。

1.主要9種類の希土類の価格

2.ネオジムの価格推移

3.ネオジム・プラセオジムの価格推移

4.ジスプロシウムの価格推移

5.テルビウムの価格推移

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