米Mulberry IndustriesとRamaco Resources、米国内のレアアース・磁石供給網強化に向けたMOUを締結

米国の高性能永久磁石メーカーであるMulberry Industries(本社:ジョージア州)と、ワイオミング州でレアアース資源開発を進めるRamaco Resourcesは、米国内のレアアースおよび永久磁石のサプライチェーン強化を目的とした非拘束的な覚書(MOU)を締結したと発表した。

MOUによると、Ramaco社はワイオミング州の鉱山で開発するレアアース資源から、サマリウム(Sm)、ネオジム・プラセオジム(NdPr)、イットリウム(Y)、ガリウム(Ga)、およびジスプロシウム/テルビウム(Dy/Tb)を含む酸化物を、Mulberry社へ非独占ベースで供給する方針。Mulberry社はこれらの国内原料に加え、同社が保有する10年分のレアアース在庫を活用し、ジョージア州の工場で高性能永久磁石を製造する。

Mulberry社は、NdFeB(ネオジム磁石)、SmCo(サマリウム・コバルト磁石)、AlNiCo磁石を一貫生産する米国企業。特にSmCo磁石では、西側で数少ない全工程一貫生産体制を持つ企業の一つとされる。F-35戦闘機1機には、飛行制御・照準・電源系統などに約50ポンド(約23kg)のSmCo磁石が使用されているという。

同社は、独自の拡散技術により重希土類の使用量を30〜80%削減できるとしており、供給制約が続く重希土依存度を引き下げつつ、航空宇宙・国防用途向けの高性能化・軽量化を実現する狙いがある。

一方、Ramaco社のワイオミング州にある鉱山は、米国で70年以上ぶりに新設されたレアアースおよび重要鉱物の鉱山と位置付けられており、まずは商業用酸化物の一貫生産を目指す。既に採掘と試験加工施設の建設が進んでいる。 今回のMOUは、レアアースの採掘から精製、金属化、磁石生産に至るまで中国が圧倒的優位を占める現状に対し、米国内での供給体制構築を進める動きの一環とみられる。

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