アメリカとオーストラリア両政府は10月20日、戦略鉱物・レアアース資源の供給強化に向けた協定を締結した。両国が今後6か月以内に総額30億ドルを投資し、最終的に約85億ドル規模のプロジェクトを開発する方針を示した。狙いは、中国が支配的立場にある重要鉱物の採掘・精製分野での依存度を引き下げ、サプライチェーンの安定化を図ることにある。
今回の協定には、オーストラリア国内における新たな鉱山開発と精製施設の建設が含まれる。米国防総省は西オーストラリア州に年産100トン規模のガリウム精錬所を設置する計画を発表。さらに、両国はレアアースやニッケル、リチウムなどの価格・販売・企業買収に関しても協調を強化する。
署名式に出席したトランプ米大統領は、「中国がレアアース輸出を制限したことは敵対的な行為だ。米国は自ら資源を確保する新たな時代に入る」と強調した。アルバニージ豪首相も「今回の合意は、地域安全保障と経済協力の新たな段階を切り開くものだ」と述べた。
協定自体には法的拘束力はないが、両国政府は今後、国防・エネルギー・ハイテク産業における資源供給を共同で管理していく方針を確認した。
現在、中国は世界のレアアース採掘量の約70%、精製能力の約90%を占める。これらの元素は、半導体、電気自動車、風力発電、戦闘機などに不可欠であり、米国はその供給の多くを中国に依存してきた。
今年、中国政府はレアアースおよび関連技術の輸出を厳格に管理する新制度を導入。これに対抗する形で米国は100%関税を発表しており、両国間の資源覇権競争が激化している。