米資源開発企業のアメリカン・リソーシズは7月、子会社ReElement Technologiesを通じ、インドのリサイクル企業Exigo Battery Solutions と合弁会社を設立したと発表した。両社は、使用済みの電気自動車(EV)用モータ、ハードディスクドライブ、風力タービン、MRI装置などからの廃棄磁石をリサイクルし、レアアースの回収・精製を行う。
この合弁事業は、レアアースの安定供給とサステナブルなサプライチェーン構築を目的としており、米国ReElement社の分離技術と、Exigo社のレアアース原料の調達・前処理ノウハウを融合。ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などの高純度酸化物(99.5%以上)を年産2,000トン以上生産することを目標としている。
まずは、インドから供給されたレアアース精鉱を、米インディアナ州マリオンにあるReElementの施設で処理する形で事業を開始。将来的にはインド国内へのReElement技術の導入を進め、現地での処理能力を高めることで、物流コストの削減とさらなるコスト競争力の強化を図る。
アメリカン・リソーシズのCEOマーク・ジェンセン氏は、「レアアース業界においてコスト競争力のあるサプライチェーンを築くためには、国際的な協業と連携が不可欠。Exigoとの提携により、コスト、純度、スケーラビリティの観点で既存供給網と真っ向から競争できる体制が整った」とコメントした。
Exigo側もこの協業に期待を寄せており、バッテリーソリューション事業責任者のラーフル・シン氏は「グローバル展開を強化する中で、米国の先進技術を持つReElementとの連携は、当社がレアアース市場で主要プレーヤーになるうえで大きな一歩」と語った。
ReElementの技術は、製糖・製薬業界で数十年にわたり使用されてきた成熟したプロセスをベースとしており、従来の湿式製錬で必要とされる有害酸や溶剤を使用しないのが特徴。樹脂とクロマトグラフィー分離を用いることで、環境負荷と資本コストを抑えつつ、高純度なレアアース酸化物の生産を可能としている。
ジェンセン氏は「廃棄磁石から重希土類と軽希土類の酸化物を分離・精製するこの技術は、我々がインディアナで3年以上実証してきた。今後はExigoと共に原料供給と最終製品の収益を共有しながら、相互に最大の価値を生み出していく」と述べている。 今回の合弁事業は、使用済み製品からのレアアース回収によって、米国産業のニーズに応える高付加価値材料を供給することを目的としており、今後はリサイクルレアアース市場におけるコスト・純度・持続可能性の新たな標準を確立することを目指す。