シンガポールのメディアによると、オーストラリアの希土類企業ライナス(Lynas Rare Earths Limit)は、マレーシアのペナン州にある希土類工場の営業許可に含まれる複数の禁止事項が2023年7月1日以降も継続される場合、同工場を一時的に3か月間閉鎖する準備ができていると発表しました。
「The Straits Times Online」によると、ライナスは最新の四半期報告書で、ペナンの希土類工場が閉鎖されるかどうか、または継続的な運営が可能かどうか、西オーストラリア州カルグーリに設置される希土類精鉱分解および洗浄設備の完成が加速されるかどうかなど、さまざまな状況に対処するための対策を立てています。
報告書によると、マレーシア政府が希土類精鉱などの原材料の輸入と加工を認めない場合、同工場は7月中旬に3か月間閉鎖され、その後低生産量を維持し、カルグーリの希土類加工工場が生産した混合希土類炭酸塩がマレーシアに到着するまで生産を再開しない予定です。マレーシアは混合希土類炭酸塩の輸入を禁止していません。
ライナスは2012年にマレーシアに対し、オーストラリアから希土類精鉱を輸入しないこと、希土類精鉱をマレーシアで分解および洗浄しないこと、および水漉し精製固体廃棄物をマレーシアに保管しないことを含む4つの条件を保証しました。マレーシア政府はこれを受けて、ライナスに対し営業許可を発行し、有効期限を2023年6月30日まで継続的に更新してきました。
ライナスは2022年5月にマレーシア政府に上記の4つの条件の撤廃を申請しましたが、科学、技術、革新省の長官チョン・リー・コンは2023年2月に申請を却下したと発表していました。
ライナス社ですが、双日株式会社(以下「双日」)と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下「JOGMEC」)は、2023年3月7日、2011年に共同で設立した日豪レアアース株式会社(以下「JARE」)を通じ、ライナス社への総額2億豪ドル相当の追加出資(以下「本出資」)を決定しました。
本出資に伴い、ライナス社が生産するマウント・ウェルド鉱山由来の重希土類であるジスプロシウムおよびテルビウムの最大65%を日本向けに供給する契約をライナス社と締結しました。本件は日本企業が参画する鉱山からの重希土類一貫生産プロジェクトにおける初の日本向け供給契約となります。
ライナス社は現在日本へ供給される軽希土類は、モーター用磁石の主原料と使用されています。
さらに、ライナス社は、磁石に耐熱性を高める重希土類の生産を開始します。現在中国からの輸入のみですが、今後は中国以外のサプライチェーンができそうです。
■参考■
レアアース(重希土)の日本向け供給確保~豪州ライナス社への追加出資~ : ニュースリリース | 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構[JOGMEC]