米国防総省、MP Materialsに4億ドル出資 レアアース磁石の国産化を加速

アメリカのレアアース企業MP Materialsは7月10日、米国防総省との間で戦略的な官民パートナーシップを締結し、国防総省が同社の優先株4億ドル分を取得すると発表した。これにより、国防総省は同社の筆頭株主となる見通しだ。

MP Materialsは、カリフォルニア州に位置する米国内唯一の稼働中レアアース鉱山「マウンテンパス鉱山」を保有しており、今回の出資は、同鉱山での重希土類分離能力の強化や、新たな磁石製造施設の建設に充てられる。

米国内の磁石生産能力、現在比10倍に

新設される磁石製造拠点「10Xファシリティ」は、今後選定される米国内の拠点に設置され、2028年の稼働開始が予定されている。稼働後は、MP Materialsのレアアース磁石製造能力が年間1万トンにまで引き上げられる見込みで、現在の約10倍となる。

また、同社はマウンテンパス鉱山での重希土類分離能力の強化も進めており、採掘から分離・精製、磁石製造までを一貫して米国内で完結する体制の構築を急いでいる。

軍事・商業双方に供給、対中依存の脱却へ

レアアース磁石は、F-35戦闘機、無人機、潜水艦など、先端兵器システムに不可欠な部材である。しかし米国はこれまで、レアアースおよび磁石の供給を中国など外国に大きく依存してきた。

今回の官民連携は、こうしたサプライチェーンの脆弱性を克服し、安全保障上のリスクを軽減するための戦略的措置と位置づけられる。

契約には、ネオジム・プラセオジム(NdPr)製品に対する10年間の価格下限(1キログラムあたり110ドル)設定や、「10Xファシリティ」で生産される全磁石の10年間の買い取り契約も盛り込まれており、安定した収益確保と投資回収を可能にする。

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