米国が進めるレアアース(希土類)供給体制の自立に向けた新たな動きとして、ワイオミング州で新たなレアアース鉱山プロジェクトが正式に始動した。現地時間7月12日(金)、米エネルギー省のクリス・ライト長官がRamaco Resources社の起工式に出席し、計画の本格始動を後押しした。
元炭鉱が“宝の山”に 推定埋蔵量170万トン
Ramaco社はもともと石炭を主業とする企業だったが、2023年に200万ドルで取得したブルック炭鉱の地下に、大量のレアアース資源が存在することを偶然発見した。探査の結果、鉱床には最大170万トンにのぼるレアアース酸化物が埋蔵されていると推定されており、米国内で新たに開発されるレアアース鉱山としては70年以上ぶりとなる。
同社は今後、石炭採掘と並行して鉱石からレアアースを商業的に抽出する方針を示している。
ネオジムやテルビウムなど含有 国内加工・供給を強調
米国の国家研究機関による分析によれば、ブルック鉱床に含まれるレアアース酸化物のうち、約40%がネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ディスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)といった、ハイテク製品や防衛装備に不可欠な元素で構成されている。また、戦略的重要性の高いガリウム(Ga)、スカンジウム(Sc)、ゲルマニウム(Ge)も含まれている。
Ramaco社のランドール・アトキンスCEOは、「われわれはワイオミング州で採掘し、ワイオミング州で加工し、政府を含む国内の顧客に販売する」と語り、米国内で完結するサプライチェーンの構築に強い意欲を示した。
試験工場の建設も開始 州政府からの支援も
起工式を経て、同社は炭鉱の本格採掘と並行して、レアアースの試験加工工場の建設に着手する。試験工場は1年間稼働し、その結果を基に商業規模での施設設計を行う計画だ。
また、このプロジェクトに対しワイオミング州政府も支援を行っており、2025年初頭には、レアアースおよび重要鉱物の加工施設建設に向けて610万ドルの補助金が交付された。