中国の希土類需給と価格動向が世界の希土類市場に大きな影響を及ぼしています。世界最大の希土類市場として、市場の動向をリサーチし、週報や月報で市況を報告させていただきます。
目次
一、希土類現物市場の概況
2025年5月19日から23日にかけての希土類価格は、前週の堅調な動きから一転し、全体的にやや軟調な展開となった。
ネオジム系
酸化ネオジムの平均価格は60.38ドル/kgで、前週比-0.28%、1週間の変動率は-0.17%とわずかに下落した。
金属ネオジムは74.54ドル/kgで、前週比-0.84%、1週間の変動率は-1.62%とやや大きめの下落となった。
ネオジム・プラセオジム系
ネオジム・プラセオジム酸化物は59.60ドル/kgで、前週比-0.67%、変動率-0.87%と軟調な推移。
混合金属も73.36ドル/kgで、前週比-0.43%、1週間の変動率は-1.01%と連動して下落した。
ジスプロシウム系
酸化ジスプロシウムは226.05ドル/kgで、前週比-1.41%、1週間の変動率は-0.82%だった。
金属ジスプロシウムは285.16ドル/kgで、前週比-0.54%、変動率-1.29%とやや軟化した。
ジスプロシウム鉄も221.19ドル/kgで、前週比-0.76%、変動率-0.84%とやや値を下げた。
テルビウム系
酸化テルビウムは989.80ドル/kgで、前週比-0.90%、1週間の変動率は-1.75%と下げ幅が大きい。
金属テルビウムは1,225.84ドル/kgで、前週比-0.07%、変動率-1.28%とやや下落したが、価格水準は依然として高い水準を維持している。
一時的な価格上昇から調整局面へ
先週、大手磁性材料企業の入札を受けて、主力製品の価格が一時的に大幅に上昇した。今週に入り、レアアース市場は弱含みで推移しながら、安定した調整局面に入っている。市場全体の取引ムードは低調で、分離企業は価格を維持しつつ売り渋る姿勢を見せている。
金属精錬企業では、受注の減少により原料コストが製品価格を上回る「逆ザヤ」状態が続き、一部では減産や操業停止が進行。貿易業者は積極的に問い合わせを行っているものの、実際の取引量は限定的となっている。
大手と中小で明暗
永久磁石業界では、企業間の二極化が進んでいる。中小企業は新規受注が鈍く、長期契約による最小限の補充にとどまっている。一方、大手企業は豊富な資源と輸出許可の優位性を活かし、安定した生産体制を維持している。
大手磁石メーカー6社は、欧州の自動車メーカー向けに輸出許可を取得しており、欧州市場での受注増が高性能レアアース金属の調達をけん引している。欧州市場からの注文は大幅に伸びている。
国際価格高騰も中国国内供給に制限
供給面では、分離工場が生産コストに支えられて価格維持の姿勢を強めている。輸出規制と密輸取締りの強化により、安値での販売を拒む企業が増加している。
中重希土類に対する輸出政策が戦略的価値を高める一方で、国際市場ではパニック的な買いが加速。欧州市場ではジスプロシウム酸化物が1キログラムあたり850ドル、テルビウムは3000ドルを突破するなど価格高騰が続いているが、中国からの輸出量は限定的となっている。ミャンマー鉱山からの輸入は再開されたものの、鉱山側が売り渋る姿勢を取っており、低価格品の流通は依然として限られている。
スクラップ市場は在庫過剰も低価格品不足
レアアーススクラップ市場では、全体として在庫は潤沢だが、低価格資源の供給は不足している。ばら売り品の流通が多く、在庫調整にはなお時間を要する見通しだ。プラセオジム・ネオジム金属の価格変動の影響もあり、在庫保有者は慎重な姿勢を維持している。
二、今週の主要な希土類製品の価格変動
主要9種類の希土類の価格及びその推移は下記の通りである。
1.主要9種類の希土類の価格

2.ネオジムの価格推移

3.ネオジム・プラセオジムの価格推移

4.ジスプロシウムの価格推移

5.テルビウムの価格推移
