露プーチン大統領、レアアース開発ロードマップの承認を指示

ロシアのプーチン大統領は11月4日、政府に対し、12月1日までにレアメタルおよびレアアース(金属)の採掘・生産に関する長期開発ロードマップを承認するよう指示した。これは第4回東方経済フォーラム終了後に出されたもので、クレムリン公式サイトでも正式に公表された。

大統領令には「ロシア政府は、既存の指示を踏まえ、レアメタルおよびレアアースの採掘・生産に関する長期的な行動計画(ロードマップ)を承認すること」と明記されている。

中国の動向を受け、ロシアのレアアース政策が転換

プーチン政権は、中国がレアアースを輸出管理や貿易摩擦の対抗手段として活用する姿勢を見せたことを受け、レアアース政策の方向性を大きく転換した。今年2月にはプーチン大統領自らが「米国とのレアアース開発協力に前向き」と発言したものの、ウクライナ紛争の長期化により具体的な進展は見られていない。

一方で、ロシア安全保障会議の書記を務めるセルゲイ・ショイグ氏は先ごろ、新聞に寄稿し、総額7,000億ルーブル(約6,300億円)を投じてシベリアにレアアース加工クラスターを建設する計画を明らかにした。計画にはレアメタル精錬、半導体関連産業などを含む広範な産業チェーンが盛り込まれ、約3,500人の雇用創出が見込まれている。

ショイグ氏は記事の中で「レアアースの完全な国内加工体制の確立は、ロシア連邦が主権国家として存続するための歴史的課題だ」と強調し、今回のプーチン指示の政治的・世論的な土台を築いた形となった。

世界有数の埋蔵量、開発はわずか2%

ショイグ氏によると、ロシアには少なくとも15種類のレアアース金属が存在し、確認済み鉱床は18か所、総埋蔵量は2,800万トン以上に上るという。これは米国地質調査所(USGS)が推定する380万トンを大幅に上回る。しかし、実際に開発されているのは全体のわずか2%以下にとどまり、精製・加工分野での技術基盤が脆弱なため、精製品・設備の約75%を輸入に依存しているのが現状だ。

グローバル供給網の再編が進む中での動き

レアメタルやレアアースは、半導体、電気自動車、風力発電、航空宇宙、防衛、AIハードウェアなど、あらゆる先端技術産業の基盤を支える戦略資源である。近年、グリーンエネルギー転換やデジタル化の加速に伴い、各国で需要が急増。米国、欧州、日本などの主要経済圏は相次いで重要鉱物法やサプライチェーン安全保障戦略を打ち出し、中国主導の供給網依頼からの脱却を目指している。

今回の指示は、プーチン大統領が9月に出席した東方経済フォーラムで掲げた方針を具現化するものであり、ロシアは今後、極東地域を中心に中国、韓国などアジア諸国との共同開発や技術協力を模索するとみられる。

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