豪州のIonic Rare Earths Ltdは一連の分離作業を経て、子会社IonicREのベルファスト工場で高純度テルビウム酸化物の生産に成功したと複数の海外メディアが報じた。この取り組みは大手自動車メーカーのFord Technologiesと英国の合金専門メーカーのLess Common Metals (LCM)社との協力により加速された。
世界で初めて希土類磁石からテルビウムを回収し、純度99.5%以上のテルビウム酸化物約2.8キログラムを初期生産で達成した。
Ionic Rare EarthsのBrett Lynch会長は、エネルギー転換産業向けの欧米サプライチェーン開発に向けた成功を、「IonicREにとって重要なマイルストーンであり、風力発電などの主要クリーンエネルギー産業向けの、安全かつ持続可能な欧米サプライチェーン構築を目指す中で、同社をこの分野のリーダーにするもの」と評した。
「希土類永久磁石のサプライチェーン廃棄物からこれらの元素を高純度で製造する能力は業界の勝利だ。ジスプロシウムとテルビウムは、世界供給の98%以上を中国の生産者が占めている。これらの元素へのアクセス方法を変革する機会を示している」とLynch会長は付け加えた。
豪州のIonic Rare Earthsは希土類元素の探査と開発に特化し、環境に優しい採掘技術と持続可能な資源開発に注力している。
テルビウムは希土類磁石において重要な役割を果たす元素である。特にネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ボロン(B)を主成分とするネオジム磁石の性能を向上させるために添加される。磁石の耐熱性向上に寄与し、高温環境下で使用されるモーターや発電機などの応用において性能の安定性を保証する。
テルビウム添加により磁石の保磁力が向上し、より強力な磁場を生み出すことが可能となる。これは、電気自動車のモーターや風力発電タービンなど高性能を要求される先進技術の分野での需要を高めている。
しかし、テルビウムは稀少かつ高価であり、その使用量を最小限に抑えつつ性能を最大化する技術開発が進んでいる。これらの背景から、テルビウムは希土類磁石の性能向上に不可欠な要素として重要性を増している。
■ご参考:
Ionic Rare Earths Produces High Purity Terbium Oxide (theassay.com)
Ionic Rare Earths moves forward with Ford Technologies (miningreview.com)