中国の希土類製品輸出規制がドイツ自動車産業に打撃

ドイツのメディアはこのほど、中国による希土輸出管理の強化がドイツの自動車産業に深刻な影響を及ぼしていると報じた。

自動車に多用される高性能磁石の製造には、ネオジムやジスプロシウムなどの希土類金属が不可欠である。これらの磁石は、駆動モーター、電動パワーステアリング、パワーウィンドウ、シート調整装置など、車両のさまざまな部位に組み込まれており、特に高級車では平均して70個以上の高性能磁石が使用されているという。

これらの磁石は、通常の鉄製磁石と比べて性能がはるかに優れており、電力効率の向上や軽量化に直結する重要部品である。しかし、その生産は中国に大きく依存しており、世界の希土類精製能力の約70%が中国に集中している。欧州連合(EU)は、事実上その全量を中国からの輸入に頼っている状況だ。

2025年4月、米国が対中関税を再び引き上げたことを受けて、中国は対抗措置として7種類の重要な希土類に対する輸出規制を導入。一時は完全な輸出停止を行い、その後も複雑な許可制度を採用したことで、欧州の自動車メーカーにとって調達が困難な状況が続いている。

ドイツの自動車専門家フィリップ・ラッシュ氏によれば、中国で希土輸出の許可審査を担当する職員は約60名に限られており、実際に許可を出す権限を持つ官僚はわずか3名のみ。さらに、当局の業務時間は1日数時間に制限されており、許可申請の通過率はおよそ25%程度にとどまっているという。

この事態に対し、ドイツ産業界では強い懸念が広がっている。ドイツ産業連盟(BDI)の幹部ヴォルフガング・ニーダーマーク氏は「これはドイツの製造業全体に対する深刻な警鐘だ」と述べ、ドイツ自動車工業会(VDA)も「一部の生産停止に発展する可能性がある」と危機感を示している。

報道では、主要自動車メーカーの現状についても言及されている。

・BMW:生産自体にはまだ直接的な影響はないとしているが、すでにサプライチェーンに問題が生じていると認めている。

・メルセデス・ベンツ:原材料の在庫拡充を進めており、事態の長期化に備えた対応を強化している。

ドイツの著名な経済学者ヴェロニカ・グリム氏は、今回の危機を契機として、国家レベルでの希土類確保戦略の策定を提言している。彼女は次のような対策が必要だとしている:

  • 欧州全体での共同調達体制の構築
  • 国家レベルでの戦略的備蓄の創設
  • カナダ、オーストラリア、チリなど資源国との関係強化

グリム氏は「中国依存を脱却しなければ、今後も同様の供給ショックに翻弄されることになる」と警鐘を鳴らしている。

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