米国サウスカロライナ州のeVAC Magnetics(ドイツVACUUMSCHMELZE〈VAC〉グループ傘下)は12月12日、同社工場で生産したネオジム磁石(NdFeB)の初出荷を完了したと発表した。
VACグループのエリック・エッシェンCEOは「米国の商業・防衛用途向けに、国内で最先端の磁石を供給できる体制が整った」と強調。国家安全保障および産業競争力強化の観点からも重要な投資だと位置付けた。同社はGMなどとの長期供給契約の支援も受けつつ、軍需向け供給力の確立を主要ミッションの一つとしている。
生産原料となるネオジム・プラセオジム(NdPr)は、カリフォルニア州マウンテンパス鉱山を運営するMP Materialsから供給される。工場は2026年第1四半期までに年産2,000トン規模への増強を予定しており、将来的には最大6倍規模までの拡張も視野に入れる。
米国では長年、NdFeB磁石の国内生産が途絶え、需要の9割以上を輸入に依存してきた。特に供給の大半は中国が占め、地政学的リスクが指摘されていた。このため、今回の初出荷は米国の商用NdFeB磁石製造の「再開」として象徴的な意味を持つ。
一方で、国内需要を十分に賄うには供給量はまだ不十分であり、重要原料の対外依存も続くなど、規模拡大にはさらなる投資が必要との見方もある。それでも、米国のレアアース磁石サプライチェーン再構築が本格始動したとの評価が広がりつつある。
