マレーシアのGraphjet Technology(Nasdaq: GTI)は、マレーシアのスバン地区で世界初の量産規模となる「農業廃棄物を利用したグラファイト製造施設」を稼働開始したと発表した。この施設は、パーム油製造の副産物であるパーム核の殻をリサイクルし、バッテリーグレードのグラファイトを生産する最先端の工場である。
年間約40,000台のEVを支える生産能力
新たに稼働した施設は、年間最大9,000トンのパーム核殻をリサイクルし、3,000トンのグラファイトを生産する。この量は約40,000台の電気自動車(EV)のバッテリーを支えるのに十分な規模であり、持続可能で効率的なバッテリー材料供給を可能にする。
環境に優しい革新的な技術
Graphjetの特許技術は、従来の製造プロセスと比較して二酸化炭素(CO2)排出量を最大83%削減し、生産コストを最大80%削減する。同社のグラファイト製造では、1kgあたりわずか2.95kgのCO2を排出。中国のグラファイト製造(天然:16.8kg/合成:17kg)に比べ、環境負荷が大幅に低い。
ネバダ州への拡大計画
マレーシアの施設で生産されたハードカーボンとグリーングラファイトは、米国ネバダ州で建設中の新施設に原料として供給される。この拡大計画により、GraphjetはEVや半導体市場向けに持続可能でコスト効率の高い材料を提供する主要サプライヤーとなることを目指している。
CEOのコメント
GraphjetのCEO兼共同創設者であるAiden Leeは、以下のように述べている。
「今回の施設稼働は、当社が世界的なグリーングラファイトの主要サプライヤーとして成長するための重要な一歩だ。この施設は、環境への配慮を基盤とした技術力を示し、クリーンエネルギー市場への貢献を強化する。」
「中国以外で最大規模のグリーングラファイト施設として稼働を開始したことは、持続可能で効率的な生産の新しい可能性を示すものだ。」
持続可能な未来への貢献
中国はグラファイトの生産量で世界トップの地位を占めている。2022年には約121万2000トンを生産し、世界全体の約65%を占めた。この圧倒的なシェアにより、黒鉛市場での主導的な役割を担っている。
2023年12月1日、中国政府は高品質のグラファイトとその関連製品に対する輸出規制を強化した。特に、純度や強度、密度が高いグラファイト製品が対象で、輸出には商務省の許可が必要となる。この政策は国内産業の保護や戦略的資源の管理を目的としており、国際市場への影響が懸念される。
Graphjetは、農業廃棄物を活用した独自の技術で、持続可能なグラファイト供給を実現させた。この技術革新により、グラファイトおよびグラフェンの世界的なサプライチェーンに新しい価値を提供し、クリーンエネルギーへの移行を支える。
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