ブラジル、希土類投資で全方位外交 

ブラジルのルラ大統領は5月7日、ワシントンのブラジル大使館で開いた記者会見で、同国の希土類資源開発について、米国や中国を含む幅広い国からの投資を歓迎する姿勢を示した。米中が重要鉱物のサプライチェーンをめぐって競争を強めるなか、ブラジルは特定の陣営に偏らず、自国での加工・高付加価値化を重視する方針を打ち出している。

ルラ氏は、トランプ米大統領との会談後に行われた記者会見で、「われわれに選好はない。ブラジルに投資したい人々と機会を共有したい」と述べた。そのうえで、米国、中国、ドイツ、日本、フランスなどを挙げ、「ブラジルとともに希土類を採掘し、分離し、加工し、それを富に変えることを望む国や企業は歓迎する」と強調した。

ルラ氏はまた、訪米前にブラジル下院が重要鉱物に関する新たな規制枠組みを承認したことをトランプ氏に伝えたと明らかにした。ブラジル下院は、国家重要・戦略鉱物政策に関する法案を可決しており、同法案は鉱物加工産業の国内育成を目的に、鉱業プロジェクト向けの保証基金や税制優遇措置を設ける内容とされる。今後は上院での審議が必要となる。

報道によると、同法案には、鉱業プロジェクトへの信用供与を支える保証基金の創設や、国内での加工・転換を促す税額控除制度が盛り込まれている。税額控除は5年間で最大50億レアル規模とされ、ブラジル政府は、単なる資源採掘にとどまらず、精製、加工、研究開発、人材育成まで含めた国内サプライチェーンの強化を狙っている。

希土類はEVモーター、風力発電機、防衛装備、電子機器などに使われる重要資源であり、米国は中国依存の低減に向けて供給網の多角化を急いでいる。ブラジルは希土類、黒鉛、ニッケルなどを抱える資源国として、単なる原料供給国にとどまらず、加工・高付加価値化まで担う産業拠点を目指している。米国にとっても、ブラジルは重要鉱物サプライチェーンを多角化するうえで有力な協力候補となっている。

一方で、ルラ政権は米国との協力を重視しながらも、中国を含む幅広い国からの投資を歓迎する姿勢を明確にしている。海外メディアは、今回の発言について、ブラジルが米中対立のなかでワシントン側に一方的に傾くことを避け、自国の主権と経済利益を軸に多様な協力を追求していることを示すものだと分析している。

米中双方を含む多国間の投資を呼び込みながら、採掘、分離、加工を国内で進め、資源の付加価値を自国に取り込むことが、ルラ政権の重要鉱物政策の柱となりつつある。

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