2025年4月4日より、中国政府が希土類磁石の輸出に新たな規制を導入したことにより、インドの電気自動車(EV)および自動車部品製造業者が深刻な調達リスクに直面している。これを受け、自動車関連企業はサプライチェーンの混乱を回避するため、インド政府に対して緊急支援を要請した。
希土類磁石、特にネオジム磁石は、xEVの駆動モーターを含むさまざまな自動車部品に不可欠な材料である。中国はこれらの磁石の世界最大の生産・輸出国であり、インドの自動車業界も中国からの供給に大きく依存している。
今回導入された新たな規制では、重希土類を含む磁石の輸出に際して、最終ユーザー証明書の提出が義務付けられた。加えて、インド向けの輸出にはさらに厳しい条件が課されている。証明書はインド外務省およびインド駐在中国大使館によって認証され、「当該磁石が軍事用途に使用されず、第三国へ再輸出されない」ことを保証する内容でなければならない。
インド政府は2025年5月23日時点で、すでに30件の最終ユーザー証明書を発行したと発表している。一方で、中国大使館による追加認証には通常45日程度を要するとの見通しが示されている。
自動車業界では、こうした手続きの遅れがEVを含む製造計画に深刻な影響を及ぼすとの懸念が広がっている。複数の大手EVメーカーはすでに中央政府および関係省庁と協議を開始しており、必要な介入措置を求めている。
関係者によれば、中国政府は世界中の輸入者に対し、「永久磁石は防衛用途および米国向け輸出には使用できない」との原則を改めて明示しており、インドにも同様の条件が適用されている。また、インド政府は商工省外国貿易総局(DGFT)を通じて政府保証を付与する仕組みを整備している。
自動車産業において永久磁石は極めて重要な役割を担っており、今回の中国による措置が長期化すれば、インドにおけるEV普及や車両生産全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある。こうした事態を受け、インド政府と産業界は、サプライチェーンの安定化に向けた代替供給源の確保や国内生産体制の強化といった中長期的な対策に迫られている。