インド政府は、クリーンエネルギーや原子力などの重要鉱物の安定供給を確保するため、希土類原料(REE)の採掘・精製能力の拡大や海外供給源の多角化を進めている。
生産能力の制約
米国地質調査所(USGS)の2024年データによると、インドの希土類埋蔵量は約690万トンと推定されているが、年間生産量はわずか2,900トンにとどまっている。技術力不足が生産拡大の課題となっている。
急成長と資源依存リスク
インドの急速な工業化に伴い、鉱物資源の需要は急増。2024年の鉱物輸入額は110億ドルを突破した。現在、インドは主に中国とロシアからの供給に依存しているが、地政学的リスクを考慮し、安定供給の確保が急務となっている。
国内生産拡大の取り組み
インド政府は、オディシャ州ガンジャム地区のインド・レアアース社のチャトラプール工場で年間20万トンの鉱物生産能力を増強する拡張プロジェクトを2025年度に始動。さらに、新技術の導入や資本投資による生産効率の向上を進めている。
海外供給源の多角化
2024年11月、インドはモンゴルとコークス炭やレアアースの供給協定を締結し、鉱物輸送ルートの整備を計画中。この協力を通じて、希土類や鉱物資源の確保だけでなく、ロシアや中央アジアとの関係強化も狙う。特にエネルギーや戦略資源の調達においては、中国依存を低減し、リスク分散を図る考えだ。
インドは今後、国内生産力の強化と海外供給ネットワークの拡大を両軸に、希土類の安定供給体制を確立していく見通しだ。