米国のNiron Magnetics、世界初の希土類フリー永久磁石製造工場を開設

米国のNiron Magneticsは、希土類を一切使用しない永久磁石を製造する世界初の商業試験工場を、米国ミネアポリスに開設したと発表した。この新たな施設は、電気自動車、風力エネルギー、消費者向け電子機器など、さまざまな技術や産業にとって重要な永久磁石の持続可能な代替品を生産する。

Niron Magneticsのクリーンアースマグネット技術は、従来の希土類磁石に頼らず、鉄と窒素という豊富で環境に優しい素材を使用している。現在、強力な永久磁石の約90%は中国で生産されており、このサプライチェーンへの依存は各国の安全保障や環境問題にとって大きなリスクとなっている。Nironの技術は、こうした課題に対する解決策として、米国内で持続可能に生産される磁石を提供し、希土類を必要としない磁石市場の拡大を目指している。

このミネアポリスの商業試験工場は、Nironのクリーンアースマグネット技術の大規模な生産に向けた重要なステップとなる。施設の年間生産能力は5トンを超え、次世代のクリーンエネルギー技術や持続可能な製造業を支える基盤を提供する。同社のCEOであるジョナサン・ロウントゥリーは、「この施設の開設により、米国における高性能磁石の信頼できる国内供給体制が整い、国家安全保障にとって重要な技術をサポートすることになる」とコメントしている。

また、Nironはミネソタ州サートルに新たな製造施設を建設する計画も発表しており、2026年に操業を開始する見通しだ。この施設では、年間1,500トンの希土類を使わない磁石を生産し、クリーンエネルギー技術の進展に大きく貢献すると期待されている。

<背景と意味>

世界の磁石産業において、希土類元素は非常に重要な役割を果たしている。特にネオジム磁石は、電気自動車や風力発電、データセンターなど、先端技術に欠かせない。しかし、希土類は中国が生産の大部分を占め、供給リスクが高く、採掘プロセスには環境への悪影響が伴う。この状況は、各国が希土類依存から脱却しようとする動きの背景となっている。

Niron Magneticsの技術は、希土類に代わる持続可能な素材を用いた磁石を提供するものであり、こうした課題に対する革新的な解決策だ。この技術が普及すれば、希土類の供給リスクを減らすだけでなく、環境負荷の軽減にもつながる。

米国政府もこの技術に注目しており、Nironは国防総省や海軍研究所と協力し、国内の磁石供給体制強化に向けた取り組みを進めている。このような背景から、Nironの技術は国際的な競争力を持つと同時に、クリーンエネルギー技術の進展にも大きな意味を持つと考えられている。

Niron Magneticsが今後どのように成長し、磁石産業にどのような影響を与えるかに注目が集まっている。

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